【報告】仙台大学履修証明プログラムで講義を行いました

2021年11月27日(土)に仙台大学LC棟で実施された表題のプログラムにて,時間を頂戴し,講義を担当させていただきました.
内容は「体育科教育における授業分析法と保育への活用」でした.

普段,授業分析の重要性および目的と,その方法論について大学生に講義をしていますが,今回は現役の保育士・幼稚園教諭の方を対象とした講義でした.
以下に今日の講義の中で特に伝えたかった内容を抜粋してみました.

 

「授業分析」というと,授業という”ナマモノ”を数字として捉えるという先入観から「意味がない」とか,「分析したから何だというんだ」というような批判を受けることがあります.
確かに体育に限らず,「授業」という営みは非常に個別性が高く,まさに一期一会だと思います.

しかし,そうだからこそ授業分析は必要であると考えます.

 

日本には,素晴らしい授業を展開する先生が多くおられます.
そうした先生の授業は,生徒のやる気を引き出し,またクラス全体が温かく肯定的な雰囲気を持ちつつ,規律が確立されている.
また,授業を通して明確な学習成果を生徒が獲得できていると思います.

このような授業のことを私は「職人技」と呼んでいます.
その先生が長年の研鑽によって培ってきた技術の結晶です.

そのような素晴らしい実践ですが,その先生が定年等で職から離れると失われてしまいます.
指導案やノートなどで記録は残せるかもしれませんが,実践の中で発揮される先生の職人技は時間とともにやがて消失していくのではないでしょうか.

そこで,授業を撮影し,分析することが重要となるわけです.
授業の模様を鮮明に記録する映像データと,その構造を視覚的に把握するための学習過程や教師行動の分析データがあれば,素晴らしい先生の素晴らしい実践を真似することができます.

また,これは若い先生にこそ必要になってくると思います.
ベテランの先生の技術を,早い段階で見て真似することができれば,日本の教育全体にとってプラスになり得ると思っています.
素晴らしい手本を見て,真似てみることは,独創的でユニークな授業を行うために重要であると私は考えます.

 

武道には「形」という概念があります.形というと,「古臭い」とか「形式ばっている」,「堅苦しい」などというネガティブなイメージを抱くかもしれませんが,全く違います.
形によってあらかじめ定められた作法・手続きを行うことで,ベテランも素人も同じ動きをすることが可能になります.
素人が上達するために必要なことが形には内包されています.
まさに「形にはめる」ということです.形にはめることで初心者/初学者は早く上達することが可能となるのです.

他方で,武道には「守破離」という言葉があります.
「守」とはすなわち,「守ること」です.師匠の教えに従って上達するための稽古に励むことをさします.
「破」とはすなわち,「破ること」です.師匠の教えから一歩踏み出し,殻を破って自分らしさを模索する段階です.
「離」とはすなわち,「離れること」です.師匠の教えから離れて,自分らしさを確立する段階です.
この段階を踏まず,始めから独創的な試みをしても,成果は上がらないと思います.
守るべき形があり,それを極めた先に自分らしさ(独創性/ユニークさ)が生まれてくると思います.

 

以上のパラダイムを私は信条としています.
素晴らしい授業の映像と分析データを蓄積することは,後の日本を引っ張っていく子どもを育む教師の育成に繋がると信じています.

 

今日の講義を通して,この思いに共感してもらえれば幸いです.

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